お子様の歯を守るために

お子様の乳歯はいずれ永久歯へと生え替わっていきます。
しかし、いずれ生え替わるから乳歯は虫歯になっても大丈夫というわけではありません。
乳歯にできた虫歯は、その後生え替わる永久歯にも少なからず影響を与えます。
もし今お子様に虫歯がなくても、定期的に検診を受けてお口の中を清潔に保ち、しっかりとした予防管理を行うことが大切です。
乳歯の特徴
乳歯は永久歯と比べて以下のような特徴を持っています。
- 歯のエナメル質や象牙質が薄く虫歯になりやすい
- 虫歯の進行が早い
- 歯の中にある歯随(歯の神経) の占める割合が大きく、虫歯になると歯随を傷めてしまう可能性が高い
上記の理由から、乳歯は注意深くケアしてあげる必要があるのです。
歯科医院でのメンテナンスとご家庭でのケアで歯の健康を維持するように心がけましょう。
永久歯への生え替わり
お子様の歯はお母さんのお腹の中にいるときから形成され始め、妊娠2~3ヶ月になると乳歯の芽(歯胚)が全て揃います。
生後 6ヶ月頃を過ぎたあたりから乳歯が生え始め、3歳頃にはほぼ全ての乳歯(全部で20本)が生え揃います。
個人差がありますのでこの時期にすべて生え揃っていなくても心配する必要はありません。
その後、4~6ヶ月で乳歯の石灰化が始まり、顎の骨も変化して永久歯へと生え替わりますが、生えはじめたばかりの永久歯はまだ未発達で酸に弱く、簡単に虫歯になってしまいます。
永久歯に生え替わったからといって安心せず、ご家庭と歯科医院でのお口のケアが重要となります。
時期別の注意事項
乳歯時期(生え始め)
生後半年ほどで乳歯が生え始めます。早い段階でご来院ください。
・歯科医院でフッ素塗布を行う
・食べ物を口移ししたり食器の共有をしないようにする
・甘いものを長時間ダラダラと与えないようにする
・食事のあとは必ず歯磨きをしたりガーゼで歯の汚れを拭う
乳歯時期(生え揃った頃)
三歳ほどで乳歯が全て生え揃ってきます。だんだんと食事の量が増えてくるため、虫歯になるリスクも高くなる時期です。
・歯科医院でフッ素塗布を行う
・朝、夜に規則正しく歯磨きをするよう心がける
・フッ素配合の歯磨き粉を使用する
永久歯時期(生え始め)
5〜6歳頃から乳歯が抜けて永久歯に生え替わり始めます。
生えたばかりの永久歯は免疫力が弱く虫歯になりやすいため要注意です。
・歯科医院でフッ素塗布を行う
・シーラントを行う
・お子さんの歯磨きの後、親御さんの仕上げ磨きを徹底する(出来れば10歳位まで)
永久歯時期(生え揃った頃)
12〜13歳頃には永久歯が生え揃います。
奥歯がとくに虫歯になりやすいといわれており、学校の課外活動などで外食が増えてきます。
・歯科医院でフッ素塗布と定期検診を行う
・シーラントを行う
・1日の食事量などの食生活のチェックをする
健康的な永久歯を作るために大切な乳歯のケア
乳歯はいずれ永久歯に生え変わるので、乳歯に対する虫歯の治療は必要ないと思われる方もいるかもしれませんが、それは間違いです。虫歯は感染症の疾患なので、乳歯が虫歯になってしまい、それを放置してしまうと、歯の根(神経)の方まで侵食されてしまいます。根っこの方まで侵食されてしまうとこれから生えてくる永久歯にも感染してしまう可能性が高くなります。
乳歯をしっかりケアすることは、健康かつ正しく永久歯が生えてくるためにも非常に重要な役割を担っているのです。どうせ生え変わるからという考えは捨てて、健康的な永久歯を育てるためにも乳歯のケアはしっかり行いましょう。
乳歯が抜けていない状態で永久歯が生えてきたらどうする?
永久歯が、乳歯がまだ抜けていない状態で生えてきてしまった場合は、なるべく早く乳歯を抜歯してあげるようにしましょう。永久歯が生えきってから抜歯するよりも、早いうちに抜いてあげることで、きちんとした位置や方向に生えることができ、不正咬合になるリスクも防げます。
抜歯をする際は、麻酔が必要になるため、麻酔に関する説明をあらかじめ親御さんからも、お子様に話したうえで、歯科医院にお越しください。
お子様の虫歯予防法
フッ素塗布
お子様の歯の表面にフッ素を塗布することにより、エナメル質を強化して虫歯菌が出す酸によって歯が溶けるのを防いでくれます。
また、酸で軟らかくなってしまうエナメル質を硬くする「再石灰化」の作用もありより効果的です。
初期状態の虫歯であれば、フッ素塗布だけでも元に戻せることもあります。さらに、着色汚れを防ぐ効果も期待できるので、定期的なフッ素塗布は健康な歯を維持するために有効な施術です。
それだけでなく、おうちでもフッ素入りの歯磨き粉を使用することでさらに予防効果を高められます。市販されているフッ素の濃度は、1500ppmと定められていますが、お子様の場合は、年齢により望ましい濃度が異なります。5歳までは1000ppm、6歳以上は1500ppmを目安に取り入れましょう。
シーラント
普段しっかりとお子様の歯磨きをしていても、歯ブラシの毛先が届きにくくどうしても磨き残しが出てきてしまうのが奥歯の溝です。
そのような歯ブラシが届かない歯の溝を塞ぐのが、シーラントというプラスチック樹脂です。溝をシーラントで塞ぐことにより、しっかりと歯ブラシの毛先が入りこみ磨き残しを極力減らすことができます。
シーラントは保険適用で行われるので、治療費用の負担も大きくありません。お気軽にご相談ください。
ブラッシング指導
お子様のお口の中は常に成長しているため、歯の状態によってブラッシング方法が変わってきます。
歯科医院では正しいブラッシング方法の指導もしてもらえます。仕上げ磨きのコツも教えてもらえるので、おうちでも正しく丁寧なケアができます。
お子様の歯を守るためにできること

「子どもの歯は私が守る」という気持ちをもって歯医者に通ってください。
また、子どもの歯を守るにはまずはご自身のお口の中を理解することが大切です。
虫歯菌は、生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中には存在しません。
赤ちゃんの虫歯の原因となるのは、普段から赤ちゃんと時間を過ごしているお母さんやお父さんの行動が関係していることが多いのです。
赤ちゃんと同じスプーンやお箸を使う、口移しで食べ物を与える、また愛情表現であるキスなどがその要因となります。
こうした些細な行動で、赤ちゃんのお口に虫歯菌が移っていくのです。そのため重要なのは、お母様・お父様がご自身のお口の衛生状態をチェックし、良好な口内環境を整えることがお子様へ移す虫歯菌の量を減らすことに繋がるのです。
食事の摂り方やおやつの選び方にも注意

間のお口の中は通常中性になっていますが、飲食物を摂ることで、酸性に傾きます。酸性に傾いても唾液中の働きにより中性に戻る仕組みになっていますが、だらだらと食べ続けたり、こまめに食べ物を摂取していると、中性に戻すことができず、酸性の状態が続いてしまいます。すると虫歯のリスクも高くなるため、食事やおやつの時間、回数はできるだけ決めるようにしましょう。
また、おやつの選び方にも注意が必要です。虫歯は糖分をエサにするため、甘いお菓子やジュースの摂取量には注意しましょう。甘いものはできるだけフルーツや野菜などの自然の甘みから摂ると良いです。お子様の糖分コントロールを行う際は、ご家族の方も一緒にしてあげるのが良いでしょう。
お子様の癖や習慣
お子様の悪い癖や知らないうちに習慣化してしまっていることは、早いうちに治してあげることが望ましいです。
指しゃぶり
例えば指しゃぶりを3歳を過ぎてもおこなっているのはよくない状態です。指しゃぶりは想像しているよりも吸うことによって前歯にかかる力が大きくなります。続けていると前歯が通常よりも前に突き出てしまうなど、見た目に影響を及ぼす可能性があります。
歯ぎしり
歯ぎしりや食いしばりによってかかる力も相当大きなものですが、子どもの場合、マウスピースによる予防などはできません。成人している場合は、歯ぎしりを予防するためのマウスピースを使用しますが、子どもの場合は、まだ成長段階にあるため、マウスピースを装着してしまうと、顎の成長を抑制したり邪魔してしまうことになりかねません。歯ぎしりをしていると乳歯の先端が削れてきてしまいますが、永久歯に変わるまでひとまず見守りましょう。しかし、噛み合わせときに下の前歯が上の前歯に隠れてしまうケースは、下顎を前に出す専門的な治療が必要になります。小児矯正で治療を受けるのが良いでしょう。
小児歯科のQ&A
Q. 歯磨きはいつから行うべきですか?
A. 歯の生え始めから始めてください。
お子さんの乳歯が生え始めたら歯磨きを始めましょう。
最初はうちは思うように磨かせてくれないと思いますが、歯磨きをしながら音楽テープやビデオをかけるなど歯磨きの時間が楽しくなるように努め、毎日の習慣になるように心がけてください。
この時期に歯磨きの習慣をしっかりと身につけてあげることがお子様の健やかな成長につながります。
Q. 子供が歯医者に行きたがらないのですがどうしたらよいでしょうか
A. まずは歯医者さんに慣れることから始めましょう。
お子さんが嫌がる場合、いきなり治療を始めるようなことはしません。
お子さんに説明だけをする、スタッフと遊んでもらう、ユニットに座ってもらうなど、まずは歯医者さんに来ることに慣れてもらうことからスタートし、段階を踏みながら治療を行いますので是非お子様と一緒にご来院ください。
どうしてもお子様が慣れない場合や、すぐに治療が必要な場合は、お子様によく言い聞かせ、専門医で治療するのがおすすめです。
Q. フッ素塗布は何歳から可能ですか?
A. なるべく早い時期での塗布をお勧めします。
乳歯・永久歯共に生えて間もない時期はフッ素塗布の効果が発揮されやすいので、歯が生えてきたらまるべく早い時期に歯科医院でフッ素塗布をしておくことをお勧めしますが、フッ素を塗れば安心というわけではなくその後の歯磨き習慣化や食生活のチェック、定期検診を行うことが大切です。
歯磨きをする際は、正しい方法を身につけ、しっかり歯と歯の間まで仕上げ磨きをしてあげましょう。
Q. 小児歯科には何歳から通ったらいいですか?
A.何歳からでも大丈夫です。
小児歯科には年齢の条件などはありません。 お子様のお口の中や歯のことで気になることがあればお気軽にご来院ください。