入れ歯は保険の入れ歯と自由診療の入れ歯があります。保険の入れ歯は安価で最低限噛める入れ歯を作ることを目的とします。自由診療の入れ歯は目的により材料や設計を選ぶことができます。
例えば見た目を良くしたい、長持ちさせたい、入れ歯による違和感を少なくしたいなど目的に合った作製が可能です。
では具体的に保険の入れ歯と自由診療の入れ歯で何が違うのでしょうか ?
大きく分けると 5 つ違いがあります。
目次
①見た目を配慮できる
保健治療の入れ歯では見た目の事は考えられていません。入れ歯の歯にかかるバネが金属しかなく笑ったときにかなり目立ってしまいます。一方で自由診療の入れ歯は設計次第でバネを使わない装置に置き換えることも可能です。そのためぱっと見だけでは入れ歯だと気づかれることが少なくなります。
②自由診療の入れ歯は作製する材料に制限がない
保険治療の入れ歯は材料に制限があります。入れ歯の強さが弱く割れそうだなと分かっていても使える材料が限られているので思った機能が出せないため、噛んだら歯茎が痛いといったことがあります。一方で自由診療の場合は良質な材料を制限なく使用できるため入れ歯に適切な金属や樹脂材を使用できます。例えば入れ歯の力がかかりそうな部分には金属や強化プラスチックを使っていればの強度を上げることが可能です。
③入れ歯の型採りをする時の材料が違ってくる
型採りの材料も保険診療だと制限されています。入れ歯の型採りはお口の中のいろいろな筋肉を動かして型採りする必要があります。お口の中の筋肉は常に動いているためその筋肉を機能的に採る必要があります。そのためには歯茎に適切な圧をかけた採り方が必要となりますが、保険診療の型採りの材料では歯茎に適切な圧をかけた機能的な型採りができません。そのため入れ歯を作製後使っていくと痛みが出やすいことがあります。
一方で自由診療の入れ歯の場合は適切な圧をかける材料使用できるため、お口の中の様々な筋肉を機能的に型採りが可能です。結果的に痛みが少なく、フィットした入れ歯が完成します。
④自由診療の入れ歯は残ってる歯(残存歯)にかかる負担が減る
残っている歯を長持ちさせたいと思っていても保険診療の入れ歯では設計上残っている指に負担をかかる場合が多く結果的にお口の健康寿命が短くなってしまうことがあります。
一方で自由診療の入れ歯は残った歯の負担を和らげるよう設計することができます。場合によってはインプラントいやマグネットなどを使い機能と安定を両立できるように設計できます。
⑤自由診療の入れ歯は入れ歯をお口の中に入れた時の違和感が少なくできる
保険治療の入れ歯では床の材料を金属にすることができず、ピンクのプラスチックを利用するのでプラスチックの厚みをある程度取らないと破折してしまいます。しかし一方で自由診療の入れ歯は強度の高い金属や強化プラスチックを使用できるためその分薄く仕上げることができるので入れ歯を入れたときの違和感が少なくなります。
保険治療を使い安価で早くとりあえず噛める入れ歯が作りたい方であれば保険治療の入れ歯がお勧めです。費用と時間をしっかりかけてオーダーメイドのぴったりした違和感の少ない入れ歯を作りたい方であれば自由診療の入れ歯がお勧めです。入れ歯は毎日使うものであり、失った部分を補う人工臓器とも言えるのが入れ歯です。自分に合ったものを選ぶのが難しい場合はいちど歯科医院で聞いてみましょう。
その他、特殊な入れ歯
①ノンメタルクラスプデンチャー
入れ歯の金属のバネが目立ち気になると言う方には、金属のバネが見えないノンメタルクラスプデンチャーがお勧めです。名前の通り金属のバネを使わずピンクの樹脂を使います。これが歯茎の色と馴染んでくると端から見れば入れ歯をつけているようには見えません。見た目(審美性)が優れているのがメリットです。
しかし金属を全く使わないと強度が落ちてしまいますので見えるところはピンクの樹脂を、見えない所には補強の金属が入ってる入れ歯もあります。
②インプラントオーバーデンチャー
歯茎で支えるタイプの入れ歯の下にインプラントを入れることでしっかりと噛めるようになる入れ歯です。この方法のメリットはインプラントでしっかり噛めるようになることです。通常のインプラントは失った歯の本数分必要になってきます。
しかしこの場合インプラントでストッパーを作るだけなので歯が何本失われていてもインプラント1本~数本で済みます。非常にコストパフォーマンスの良い治療法です。デメリットとしては通常のインプラントと同様に手術が必要になることです。また入れ歯で歯茎や骨が極端にやせている場合にはインプラントができない場合があります。
③コーヌステレスコープ
ある程度歯が多く残っている方で長持ちさせたい、なるべく入れ歯を小さくしたいのであればコーヌステレスコープが最適です。入れ歯の大きさを極限まで小さくできる上に、残っている間に金具をかけませんので見た目も非常にきれいです。上の歯に入れても不快症状がなく快適です。また自分の歯を最大限に支えに活用するのでかなりしっかりと噛めるようになります。
他の入れ歯と比べて長く使えることが多いのも特徴です。他の入れ歯は支えにしている歯が折れたら再作製になることが多いのですが、コーヌステレスコープの場合、抜けた場所を埋めるだけで済むこともあります。
デメリットは高額であること、入れ歯を外すと金属の歯が見えるので外したときの見た目が良くないことです。
④アタッチメントを使った入れ歯
歯の根っこを利用して歯にマグネットやアタッチメントと呼ばれる装置をつけて動いたり落ちたりしにくくなる入れ歯を作製することが可能です。アタッチメントはご自身の歯が1本でも残っていたら作製することができます。うまく設計すればかなり使いやすい入れ歯になります。残っている歯の本数が多ければしっかりと安定するようにもなります。
ただし残すことが難しかったり、歯ブラシが難しかったりします。
入れ歯は日々のお手入れや定期的なケアをすることで長く使い続けることができます。反対に完成したからといってそこで終わりではなく少しずつ調整しながら患者さんに合った入れ歯へと仕上げていく必要があります。入れ歯は歯を削る量も少なくてすみ、インプラントのような外科治療もする必要がありませんし、将来残念ながら介護が必要になってしまった場合には簡単にケアできると言う利点があります。最初は違和感があるかもしれません。どんなに技術のある技工士が作ったとしても実際に患者さんの口の中に入れてみると微妙なズレが起こります。
歯茎は入れ歯によって圧迫され跡がついたり凹んだりと微妙に形が変化します。そのため使い始めてから1週間から2週間後の調整は必ず必要です。特にはじめの1週間から2週間は入れ歯に慣れるための期間と考えましょう。
最初は舌や頬を噛みやすいので硬いものを食べたりせず調整が終わるまで柔らかいものを食べるようにしてください。もしすぐに不具合や痛みが生じた場合は我慢せずに歯科医院に来院してください。調整は歯茎と入れ歯の間にゆとりがないから強く当たっている部分がないかなどを調べます。また噛み合わせの確認等調整も随時行ってきます。