フッ素は自然にある元素の1つで水素やナトリウムなどと同じです。猛毒であるとも言われていますが、歯科で使われているフッ素は安全な化合物である「フッ化物」になるので用法・用量を守って正しい使い方をすれば悪影響を及ぼすことはありません。
フッ素の作用
・歯質強化(歯を強くする)
酸で溶けにくい歯質を作ります。歯の成分(エナメル質)はハイドロキシアパタイトと言われる結晶を作っていて、フッ素が歯に作用するとより酸に強いフルオロアパタイトという結晶に変わり、酸で溶けにくい歯質を作ります。
・再石灰化の促進作用
お口の中では脱灰と再石灰化が常に行われています。
「脱灰」とは、食事をすると糖分を餌にして虫歯菌が酸を作り出します。
歯の表面(エナメル質)に含まれるカルシウムやリンがその酸によって溶けだしてしまうことを言います。
「再石灰化」とは、食事をして脱灰されても唾液に含まれているカルシウムとリンにより修復されることを言います。
フッ素には再石灰化を促進する効果があります。
・虫歯菌の活動を抑制する
虫歯の原因菌と言われるミュータンス菌の働きを弱めて、産生する酸を作りにくくしてくれます。
どのようにしてフッ素を取り込むか?
・フッ素歯面塗布
歯科医院で歯科医師や歯科衛生士が直接フッ素を作用させる方法です。
歯科医院に置いてあるフッ素の濃度は9000ppmと歯磨剤の約9倍の濃度が入っているため年に3~4回程度の塗布がおすすめです。
特に歯の生え始めは柔らかく、完成しきっていない状態なのでフッ素塗布することにより、歯質強化してくれます。歯の生え始めだけでなく、矯正治療中や歯ぐきが下がり歯根が露出してきている歯だったり、唾液の量が減ってきている方にも効果があります。
・フッ素入りの歯磨き粉の使用
家庭で誰でもできる最も簡単な方法です。
歯科医院で置いてあるフッ素と違って1450ppmと低濃度になっていますが、毎日使える濃度になっています。最近は薬局で販売されているもののほとんどがフッ素が配合されています。
理想的な使い方は、初めに汚れを落とすために歯磨きをします。その後、歯磨き粉を成人の方で、約2㎝つけて10~15ml(ペットボトルのキャップ1杯分)で30秒洗口して終わります。歯磨き粉の味が少し残る程度が理想的です。
歯磨き粉の量は…
6か月~2歳で切った爪程度の量
3~5歳で5㎜以下
6~14歳で1㎝
15歳以上で2㎝
小さいお子さん(5歳以下)には、家庭での低濃度ジェル(500ppm)の塗布もおすすめします。
・フッ素洗口
歯磨き粉だけではうがいをしてしまうのでフッ素がとどまりにくくなります。洗口液を併用することにより、お口の中の歯ブラシが行き届きにくい場所にもフッ素がいきわたってくれるのでおすすめです。
また就寝中は唾液の分泌量が少なく菌が繁殖しやすくなります。
使うタイミングとして就寝前が効果的です。
ブクブクうがいができる年齢(4歳ぐらい)から成人の方、高齢者まで年齢問わず必要です。
このように日常生活から虫歯予防のためにはフッ素がおすすめです。
しかし、フッ素塗布をしたからといって、虫歯にならないとは限りません。
虫歯になってしまうのは、唾液量だったり食事が大きく関わってきます。