私たちのお口の健康を考える上で、意外と見落としがちなポイントに「舌苔」があります。舌苔とは、舌の表面に付着する白っぽい、あるいは黄白色の細菌のかたまりのことです。単なる汚れのように見えますが、放置すると口臭や味覚障害、さらには体調不良の原因にもなるため、正しい理解とケアがとても大切です。今回は、舌苔ができる原因や注意したいポイント、効果的な取り除き方について解説します。
目次
舌苔とは何か?
舌苔は、口腔内の粘膜が剥がれ落ちたもの、食べかす、唾液成分、細菌、白血球の死骸、色素成分などが複合的に絡み合って形成されます。色は灰白色から黄白色で、舌の中央から奥にかけて多く付着します。
この舌苔は、単に見た目の問題だけではありません。近年では、舌苔に含まれる細菌が発生させる揮発性硫黄化合物(VSC)が強い口臭の原因になることや、味覚障害、舌炎などのリスクも指摘されています。特に高齢者の場合、舌苔に潜む細菌を誤嚥することで、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があることも分かってきました。
舌苔がつきやすい人とは?
舌苔は誰にでも多少は存在しますが、特に次のような方は舌苔がつきやすく注意が必要です。
・抗生物質を長期間服用している方
・糖尿病、シェーグレン症候群、消化器疾患(十二指腸潰瘍など)を抱えている方
・間食が多い方や、食後の歯磨きを怠りがちな方
・口呼吸をしている、または常に口を開けている習慣がある方
・ストレスが強く続いている方
・舌の運動が少ない方(加齢や嚥下機能低下によるものなど)
これらの要素は口腔乾燥を引き起こしたり、舌の自浄作用を低下させたりするため、舌苔がたまりやすくなります。
舌苔が健康に与える影響
舌苔が厚くなると、見た目の不快感だけでなく、次のような影響も出てきます。
・強い口臭の発生
舌苔中の細菌がタンパク質を分解する際に悪臭成分を発生させます。
・味覚の低下
舌の表面には味を感じる味蕾が多く存在しますが、舌苔が味蕾を覆ってしまうと、食べ物の味が感じにくくなり、食事の楽しみが減少することもあります。
・誤嚥性肺炎のリスク増大
特に高齢者では、舌苔に含まれる細菌を誤って飲み込むことで肺炎を引き起こすリスクが高まるため、注意が必要です。
舌苔を取り除く方法
舌苔の除去については、以前は「無理に取り除かないほうがよい」という意見もありましたが、現在では、口臭予防や全身の健康管理の一環として適切にケアすることが推奨されています。
効果的な舌苔除去方法として、次のポイントを押さえておきましょう。
① 舌ブラシを使う
舌を傷つけないためには、歯ブラシではなく、専用の舌ブラシを使用することが推奨されます。毛先が柔らかく、広範囲をやさしく掃除できる設計になっています。
② 軽い力で奥から前へ
舌苔は舌の中央から奥にかけて多く付着しているため、舌の後方から前方に向かってやさしく撫でるように動かします。強くこすりすぎると舌を傷つけてしまうので注意が必要です。
③1日1回のケアを
舌は非常にデリケートな組織です。過度な除去はかえって炎症を引き起こすため、1日1回はケアをしましょう。
④ 無理に一度で落とそうとしない
舌苔が厚く付着している場合でも、一度で無理に全て取り除こうとせず、数日かけて少しずつケアしていくことが大切です。
舌苔除去だけではない、口腔ケアの大切さ
舌苔ができやすい背景には、全身疾患や生活習慣の乱れも関係しています。そのため、舌苔除去だけでなく、以下のようなトータルケアを心がけましょう。
・こまめな水分補給で口腔乾燥を防ぐ
・よく噛んで食べる習慣をつけ、舌の運動量を増やす
・定期的に歯科検診を受け、プロによるクリーニングを受ける
・疾患がある場合は、主治医と連携して治療を進める
口の中は、全身の健康状態を映し出す鏡ともいわれています。特に高齢者の方や慢性疾患をお持ちの方は、歯科医院での専門的なアドバイスを受けながら、日々のケアを続けることが重要です。
まとめ
舌苔は、単なる見た目の問題ではなく、口臭や味覚障害、さらには全身の健康リスクにも関わる重要なサインです。舌ブラシを使ったやさしいケアを取り入れながら、清潔なお口を維持していきましょう。